ハーバード学生

hisahiccup2005-04-06

今日はMGHで授業からだ.今日も、始まる30分前につき、皆がくるのを待つ。皮膚科は他の科と違い、皮膚科独特の言葉が存在する。だから、勉強するときに一番それがネックになることが多い。その独特な言葉の授業であった.morphology(形態学)というらしい。多分”現症”という言葉が一番僕の知っている言葉でこれにあたる.

昨日まで,外来の見学をしていて,殆ど現象をカルテに書いてなく、殆ど診断だけを書いていたので(後で分かったのだが、実は,書いてあった。ただ方法が全然今まで教わっていたのと違った。),正直、morphologyの授業があって,すごく安心した.しかし、日本よりもbiopsy(生検(体から細胞をとって顕微鏡で見ること))をしたあとの病理診断に一番重きをおいている。したがって、昨日の外来で、biopsyをとって、診断まであまりいってなかったこと、スライドにでるbiopsyが全然分からなかったこと,などに戸惑っていた僕としては、こちらのほうにとても親しみを持つことが出来た.ハーバードの医学部生と一緒にスライドにある問題を20問くらい順番に解いていく。僕は、日本にいるときに、なぜか小児科のチュートリアルで現症の書き方を発表したことがあり、プリントにまとめてあった.(近くの学生に、おせっかいにも無理やり2回も授業をして、聞かせていた.)(これ4年生には役立つと思うので乗っけとくね.)

皮膚の状態の表現をする。
(部位)に、、、、

  • 紅斑の表現
    • 辺縁(整、不整) 境界(明瞭、明瞭) 形(丸、環状、卵円形、多角形)(1センチなど)大の紅斑( 集族、散在) している。一部(癒合、(粃糠様)鱗屑)あり
  • 水疱型の表現
    • (紅暈を伴った)(中心臍窩のある) (緊張、弛緩)性の(1センチなど)大の水疱・膿疱が( 集族、散在) している。一部(糜爛、潰瘍、痂皮、瘢痕)あり
  • 丘疹型の表現
    • 光沢(あり、なし)の、表面(乾燥、粗雑、の整った)(類円形、形状不整)の辺縁(整、不整) 境界(明瞭、明瞭)(1センチなど)大の(常、黒、黄、赤)色の丘疹が(集族、散在)して(局面を形成して)いる。一部((潰瘍、糜爛、(粃糠様)鱗屑)あり。


とこんな感じだ.例えば,水疱では、口唇部に、紅暈を伴った,中心臍窩のある緊張性の1センチ大の小水疱が集簇している。一部、患者が手で描いたせいか破庖し痂皮化している。などと書くと、いわゆるヘルペスということになる。こちらでは,この書き方は、TSADと覚えるみたいだ.type, shape,allocation,distributionという感じだ。too sad to have disease.などと覚えてみた.いずれにせよ、この授業では、僕が日本で学んだものがここにあった.アウスピッツであるとか、脂漏性角化症のレーザートレラテ現象であるとか,ジベルばら色粃糠疹のヘラルドパッチなどの名前をきちんと覚えていたので,こちらの学生とも変わらないぐらいキチンと答えれたと思う。ただし、線虫などの感染症はさっぱり分からなかった。フロリダからかえって来たとかいうのがキーワードであるらしい。感染症は日本とは、結構違う。また、ばら色粃糠疹も感染症ということになっていて,ウイルスが同定されているみたいであった.(帰って,ステップを見たら感染症であると予想されていると書いてあった。)。また、ヘノッホシェノーレン紫斑症では、こちらでは、ルンペルレーデテストは行わないみたいであった.先生もしらなかったし,先生に日本の教科書を見せて,手技の方法を話してみたが、余り伝わらなかった.
そのあと薬疹の授業を聞いて終わる。

いっしょに今皮膚科をまわっている人は4人いる。基本的には月曜と水曜日だけ一同に会するらしい。僕以外は、1人女性と2人男性だ.1人の女性は結構がんばりやさんという感じがする。質問にもキチンと答えていたし、薬疹についての論文も読んできていた.男性は一人は結構カッコウよく、何事にも疑いを持つタイプみたいだ.そして、もう一人の人は、余り質問に答えることが出来ていなかった.授業が始まる前に、その男の人が小児の循環器をまわってきていたのいうはなしから、川崎病の話になった.これも、その女の人は良く知っていた.これには,こう言う作用があるというエビデンスがあるなどと、すぐエビデンスの話をするのは、こちらの学生では普通のことみたいであった.英語では"has data."という言い方をするらしい.確かに、データがあるという言い方のほうが、この言葉の持つ攻撃性は低いと思う。どこか近くに、川崎病の専門のところがあるらしく、とりあえずそこでは,怪しければ川崎病もしくは、atypical川崎病と診断するらしい.ここら辺の事情も日本と変わりない.こちらの学生は基本的に、自分の持った患者に対しては、本当に良く調べている。総合力というよりは、個々の病気に対して調べる能力に優れているという感が強い。日本の学生と比べると、まあ、僕の元いた班ならば,この人たちに負けない実力を持っていたと思う.ただし、薬は、こちらの人の方が断然強いのだが.あとで聞くと,この女性はMGHにマッチしているみたいだ.ハーバードでもトップクラスみたいである.また、小児科志望のかっこいい男性も、チルドレンホスピタルにマッチしていた.まあ、皮膚科なので,優秀な生徒が集まっているのではないだろうか。しかし、昨日のレジデントほどは、自分とのギャップをこの人たちには感じなかった.ただし、英語を読むのは無茶苦茶早い。僕の2倍ぐらいのスピードで読む。

僕自身がアメリカに持っている気分をここに書いておこうとおもう。一般的に、日本人は,アメリカ人よりも優秀である。ただし、英語能力で、格段の差があるため、研究でもなんでも、一番あたらしい情報にたどり着くまでのタイムラグがあるため、最終的には、すこし、後ろにいるように見えるのではないだろうか.この国の一番の輸出物がドルであるということからもわかるように、この国は、英語とドルをデファクトスタンダートに上げることに成功して,おいしいところをとることになっている国であると思っている。つまり、少しの天才でどうにかできる分野である、金融、外交宣伝能力と他人の力を取り入れる能力で日本は負けてきたのだとおもう。あと、戦争が強い。しかし、英語さえどうにかできれば平均としてこの国に勝つことはそれほど難しいことではないようなきがする。.ハーバードの学生もやはり優秀なのだけど,(当然僕よりは)人間は人間であって,日本の優秀な生徒と比べてそこまで違うとは思わなかった.しかも、彼らは、6年の後半で,1年のギャップもあることだし。といっても、そのねっくになる英語がとてつもなく大変なのですが,,,,

昨日よりは,少し、安心をしてきた.うむ、これならどうにかできるなあと思った.午後は、少し無理をいって、Children's Hospitalの見学にいかせてもらった.やはり、たてものは、きれいで,しかも子供向けに出来ていて.(これはあとで写真を上げます。)非常に良い感じであった.やはり子供と話をしていると楽しい。小児かわいいなあやっぱりと思いながら外来を見学していた.男児に小水疱が散在していたので,先生にTzank testを提案してみると、行ってくれた.そこで、多核の細胞を見つけ,診断がついた.Tzank testも、こちらでは、classicalで殆ど行われなくなっているみたいだ.変わりに、時間はかかってしまうのだが(???だとすると、薬の投与はいつ開始するのだろう?と今思ってしまった),より確かな抗体染色で診断をつけるらしい。かえってみると、Tzank testは67%ほどの確かさであった。中ぐらいである。

というわけで、またベス イスラエル病院に戻って,レジデントと話をして一日を終える。昨日とはうってかわって,何とかやっていけそうな気がした.あとは、人種の差による、炎症の色の変化を学べばいいのだ.と、考えてふと、気付く。そうか、だから、こちらは多民族であるため,病理で診断をするのだ.色の変化からの病態像は日本よりもはるかにむづかしい。

この一週間で,残りの3週間の予定を立てようと思う。
今日は天気が良すぎでslowな日であった。(患者が少ないことをslowというみたいだ。)こんな天気のいい日に誰も病院にいたくないよね?